彼に出逢ったのは、今から20年前の春だった。
引っ越しの数日前、新居に庭木を運んでいるときに、ひょっこりやってきた。
色黒で、髪は母の手による七三で、どこから見ても、サルのような少年に
アタシは一目惚れをした。
それから、近所ということで、家族ぐるみのお付き合いがはじまった。
同い年、ということで、彼と一緒にいる(遊ぶのではなく)ことも多かった。
ずっと彼が好きだった。
小学校の6年間、そして中学校の3年間、高校2年まで。
もう、バカみたいに好きだった。
当然、周りもみんな知っていた。
何度か告白したこともあった、告白されたこともあった。
でも、キモチのタイミングが合わなくて、付き合うことはなかった。
高校2年の夏休み、夏期講習の最終日、新宿で二人でお芝居を観た。
芝居を見終わって、ぼんやりと余韻に浸りつつ、紀伊国屋劇場を出てよろよろと、
夜の新宿を歩きながら、この人とはずっと友達でいよう。と思った。
ヘタに付き合って、別れて、気まずい関係になるよりも、今と同じ、「幼なじみ」
という関係でいた方が、きっといい。ずっと、今と同じ距離にいられる。そう思っ
た。
高校を卒業して、アタシは北海道の大学に入り、彼は仕事の関係で千歳で働くこと
になった。
北海道でも、何度か遊んだ。お盆やお正月東京に帰ってくると、北海道弁でしゃべ
りながら、映画を観に行くのが恒例になった。アタシが卒業して、東京に帰ってき
ても続いた。
今年のお正月、彼が入籍したことを聞いた。
オメデトウ!ココロの底からそう思った。
今年の春、来年の正月には彼がパパになると聞いた。
アタシの中で、何かが終わった、と思った。なにかはわからない。でも、終わった
感覚があった。
その彼とヨメを囲む飲み会が今夜ある。
ヨメに会うのははじめて。正直、どう接していいのか分からない。
相手にとっても、自分のダンナを20年前から知っているオンナは脅威かもしれない
。
どうしよう。
結局、自分まんまでいればいいのかもしれない。
ヨメを前にして、イヤなオンナになっちゃったら、自分の器がその程度だって事だ
し。
でも、相手にイヤなオンナだと、思われたくない。コレ本音。
う〜ん。どうしよう。
ハラくくって、行くしかない?アタシはアタシで自分まんまで。
今日の写真 寿司屋デビューしてみました